40代以上の約70~80%の方が感染しているピロリ菌。ピロリ菌感染者は、日本で約6000万人いると推定されています。
ピロリ菌は胃に悪影響を与えて、胃潰瘍や胃がんなどの発症リスクを高める原因です。そのため、感染経路を確認して予防したいと思っている方も多いですよね。
そこで今回は、ピロリ菌の感染経路と大人がうつるリスクについてご紹介します。
ピロリ菌の感染経路は主に3つ!
ピロリ菌の感染経路は、完全に解明されたわけではありませんが、水を介して口から胃に入る経口感染であることがわかっています。
そして、感染経路として有力なのは「糞口(ふんこう)感染」「家族内感染」「施設内感染」の3ルートになります。
1.糞口(ふんこう)感染
ピロリ菌は、胃の中だけでなく、口や便の中からも検出されます。下水道が整備されていない地域では、井戸水などを通してピロリ菌に感染した水が感染経路になることがあります。
現在の日本では、上下水道が整備され水洗トレイが普及しているので、糞口感染は少なくなっていますが、戦前から戦後復興期に幼少期を過ごした世代は、ピロリ菌の感染率が高くなります。
日本で50代以上の高齢者にピロリ菌感染者が多いのは、衛生状態が悪かった時期に井戸水などを飲んだことが理由として考えられます。
2.家族内感染
大人が咀嚼した食べ物を、子供に与えたりしていませんか?
親がピロリ菌に感染していると、子供にピロリ菌が感染する可能性が高くなります。特に、口移しはピロリ菌だけでなく、虫歯菌などを移すことがあります。
また、日本では40代以上の感染率が高いので、高齢者から子供への口移しも感染リスクが高くなります。上下水道が整備され衛生面が向上した日本では、家族内感染が主な感染経路です。
5歳までの子供は胃の酸性が弱く、ピロリ菌が住み着きやすいので、安易に口移しをするのはやめましょう。
3.施設内感染
保育所や幼稚園など、乳幼児が集団生活する施設も感染経路として考えられています。
例えば、ピロリ菌に感染した子供の嘔吐物にはピロリ菌が存在します。その嘔吐物に触れた手で、ほかの子供の食べ物や衣服を触ったりすると、口に入って感染することがあります。
施設内感染の可能性は低いと考えられていますが、感染予防のために手洗いうがいは大切になります。
ピロリ菌の感染に関する疑問
ピロリ菌は大人にもうつるのか?
大人の場合、ピロリ菌が胃に入っても、感染することはほとんどありません。というのも、大人の胃の中は酸性が強く免疫反応があるため、ピロリ菌が生息できないからです。
もし、ピロリ菌が胃の中に入ったとしても、急性胃炎を起こすことがあるかもしれませんが、ピロリ菌が生き延びて住みつくことはほとんどないようです。
夫婦間や恋人間でのキスや、飲み回しなどでピロリ菌が感染することはほとんどないので、大人が過度に心配する必要はありません。
しかし、10歳以下の子供はピロリ菌が住み着いて、大人になってから胃に悪影響を与えるので、感染経路をしっかりチェックしておきましょう。
ピロリ菌の潜伏期間について
ピロリ菌に感染するのは10歳までの子供がほとんどですが、すぐに胃炎などの症状が出るわけではありません。症状が出るタイミングは人によって違います。
30代で胃炎や胃潰瘍などの病気が出る人もいれば、60代でも胃の不快感が全くない方もいます。その人の体質や生活習慣によって影響されるため、どのくらい潜伏したら症状が出るという期間ははっきりわからないようです。
感染している人に自覚症状はある?
ピロリ菌は胃の中に住み着き、毒性のある物質やアンモニアを作り出し、胃の粘膜を破壊します。すると、胃の粘膜に慢性的な炎症が起こるため、胃痛などの症状が出やすくなります。
この状態を放置していると、胃を守る機能が弱くなり、胃潰瘍や胃ガンなどのリスクが高くなってしまいます。
40代以上の方で慢性的に胃の不快感や胃痛などがある場合、ピロリ菌に感染している可能性が高いため、一度検査してみることをおすすめします。
ピロリ菌感染による胃がんリスク
ピロリ菌に感染していても、100%胃がんになるわけではありません。しかし、胃がん患者のほとんどはピロリ菌に感染していることがわかっています。
最近の調査によると、胃がんの原因の99%はピロリ菌の感染が原因であることが判明していて、WHO(世界保健機関)はピロリ菌を「明確な発がん因子」と定義しています。
ピロリ菌に感染していなければ、胃がんになるリスクはほとんどないため、予防するためには除去治療が必須です。
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