今、医学の世界で「オキシトシン」という物質が注目されています。
「オキシトシン」とはあまり耳慣れない言葉ですが、別名「愛情ホルモン」と言われるほど、感情面や人間関係にプラスの影響を及ぼすそうです。
いったい、どのような働きがあるのでしょうか。今回は、オキシトシンの効果と分泌を増やす方法をご紹介します!
オキシトシンが増えると「幸せホルモン」も活性化!?
オキシトシンとは、脳内で分泌される神経伝達物質です。すでに半世紀近く前から婦人科の分野では使われていて、出産まじかの妊婦に投与して分娩を促したり、母乳の出を良くするなどの効果があります。
そのため、オキシトシンは主に女性が分泌するホルモンだと思われていたのです。ところが近年、オキシトシンは性別や年齢に関係なく分泌されることがわかりました。
現在では、オキシトシンは「幸せホルモン」と呼ばれるセロトニンを活性化させることが知られています。
これは、セロトニンの神経細胞にオキシトシンの受容体があるためです。セロトニンは、イライラや興奮状態を抑えて精神を安定させる働きがあり、不足すると不眠やうつ病を引き起こしやすいともいわれます。
つまり、オキシトシンが増えればセロトニンが活性化して精神が安定し、より幸福感を得られやすくなるのです。
オキシトシンの主な効果5つ!
では、具体的にオキシトシンにはどのような効果があるのかまとめてみました。
効果1 相手への信頼度が増す
オキシトシンが人への信頼度を高めることが、国内外のさまざまな研究チームの実験によりわかってきました。
見知らぬ被検者同士の金銭取引ゲームなどの実験で、オキシトシンを投与された人は、投与されなかった人よりも相手を信頼しやすいという結果が出ています。同様に、オキシトシンは家族やパートナーとの絆も強めます。
効果2 ストレスを軽減
前述したように、オキシトシンはセロトニンを活性化させます。セロトニンは精神のバランスを安定させてストレスをやわらげる効果があります。
一方で、人はストレスを感じた時もオキシトシンを分泌するといわれます。オキシトシンは人との触れ合いを求めさせる効果もあるため、結果としてストレスの軽減にひと役買っているのです。
効果3 心臓を元気にする
心臓にもオキシトシンの受容体があるため、心筋細胞の再生を助けると考えられています。実際に千葉大学の実験で「壊死を起こした心臓にオキシトシンをかけたところ、心筋細胞が拍動した」という結果が出ています。
オキシトシンにより心機能を強くして、動機や不整脈、心筋梗塞などを予防することが期待されています。
効果4 血圧の上昇を抑える
心臓が若々しく元気になれば、心臓に余分な負担がかかりづらくなるので、血圧は安定します。血圧が安定すれば、脳卒中をはじめ、さまざまな臓器障害を予防することができます。
効果5 自閉スペクトラム症の改善
東大医学部の臨床試験で、対人コミュニケーションが困難な自閉スペクトラム症の男性にオキシトシンを投与する実験を行ったところ、コミュニケーションに関係する脳の部位である内側前頭前野が活性化して障害が改善された、という結果が世界で初めて報告されました。
オキシトシンの分泌を増やす方法
オキシトシンを増やすために有効な方法は以下の通り。どれも特別な方法ではなく、日常のちょっとした心がけで増やせますよ。
1.スキンシップ
オキシトシンは、乳児が母親に抱っこをされている時に多く分泌されることがわかっています。いくつになっても、スキンシップを行うことでオキシトシンを増やせるといわれています。
親しい人同士が抱き合う「ハグ」は、とても効果的な方法です。また、親しい人からのマッサージも同様です。人以外でも、ペットなどの動物とのスキンシップもオキシトシンを増やします。
2.触れ合いやコミュニーション
スキンシップとまでいかなくても、人に親切にしたり、家族団らんを楽しんだり、相手の喜ぶことをするといったことでオキシトシンを増やすことができます。できればメールやSNSではなく、直接会う「リアル」でのコミュニケーションの方がより効果的です。
3.食事
オキシトシンはホルモンですが、ホルモンの生成を高めるにはたんぱく質が有効です。とくにイワシには、オキシトシンの構成物質であるチロシンというアミノ酸が含まれています。
オキシトシンを増やせば、オンもオフも充実!
オキシトシンは社会生活はもちろん、プライベートでも良い影響をもたらすことがわかりました。
生まれた時から母親とのスキンシップが多かった人はオキシトシンの濃度が高いともいわれます。また、相手のオキシトシンを増やせば浮気防止につながるといった見方もあるようです。
一方、オキシトシンが増えすぎることの弊害も報告されています。オキシトシンを過剰投与したところ、身内意識は強まったものの身内以外には排他的になった、という実験結果もあります。
ですから、過度にオキシトシンの分泌を増やそうとする必要はありません。日常生活のできる範囲で、ちょっと意識するくらいが望ましいですね。
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